東大ポポロ事件について分かりやすく解説してみた。

東大ポポロ事件について分かりやすく解説する 憲法
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行政書士試験を受験される皆さん、こんにちは!憲法の中でも重要な判例の一つである東大ポポロ事件(最判昭和38年5月22日)について、分かりやすく解説していきます。この判例は、憲法23条が保障する「学問の自由」と、それに関連する「大学の自治」の範囲や限界を示す重要なものです。行政書士試験でも問われる可能性がありますので、しっかりと理解しておきましょう!

東大ポポロ事件とはどんな事件?

この事件は、1952年(昭和27年)に東京都文京区にあるA大学(東京大学)の構内で起こりました。

事件の概要

東大ポポロ事件の概要

A大学の公認団体である「A劇団B」(ポポロ劇団)が、大学の教室で演劇発表会を開催しました。この演劇は、当時社会的に大きな注目を集めていた「松川事件」(国鉄の機関車脱線事故に関連する事件)を題材にしたもので、発表会は「反植民地闘争デー」の一環として行われました。開演前には資金カンパや、別の政治的事件である「渋谷事件」の報告も行われています。

この発表会に、警備情報収集を目的とした私服警察官が入場券を買って立ち入っていました。これに気づいた学生らが警察官を取り囲み、警察手帳を取り上げようとするなど、暴行を加えたため、学生らが「暴力行為等処罰に関する法律」違反で起訴されました。

何が争われたの?

東大ポポロ事件の争点

学生側は、警察官の大学構内への立ち入りは、憲法が保障する「大学の学問の自由と自治」を侵害するものであり、自分たちの行為はそれを守るための正当な行為であるため無罪だと主張しました。

「大学の学問の自由と自治とはどのようなものか」、そして「本件における警察官の立ち入りが、大学の学問の自由と自治を侵害するか」が争点となりました。

最高裁は何と判断したの?

最高裁は、憲法23条の学問の自由について、次のように判断しました。

学問の自由の保障内容

東大ポポロ事件の保障内容
  • 憲法23条は、「学問的研究の自由」と「その研究結果の発表の自由」を保障しています。
  • 大学においては、憲法の趣旨と学校教育法(旧52条、現83条1項)に基づいて、教授その他の研究者がその専門の研究結果を教授する自由は保障されるべきである、としました。
  • これらの自由は、公共の福祉による制限を受けます。ただし、大学における自由は、その本質に基づいて一般の場合よりもある程度広く認められると解されます。

大学の自治について

東大ポポロ事件の大学の自治
  • 大学における学問の自由を保障するため、伝統的に大学の自治が認められています。
  • 大学の自治は、特に教授その他の研究者の人事に関して認められ、学長や教授が自主的に選任されることなどを意味します。
  • また、大学の施設と学生の管理についてもある程度認められ、自主的な秩序維持の権能があるとしました。
  • 大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として真理を探求し、専門の学芸を教授研究するという本質に基づくものです。直接的には、教授その他の研究者の研究、発表、教授の自由と、それを保障する自治を意味します。

学生の学問の自由と大学の自治

東大ポポロ事件の学生の地位
  • 憲法23条の学問の自由は、学生も一般の国民と同じように享受します。
  • しかし、大学の学生として一般国民以上に学問の自由を享受したり、大学の施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、教授その他の研究者の特別な学問の自由と自治の効果としてにすぎない、と判断しました。つまり、学生は大学の自治の主要な担い手ではなく、その恩恵を受ける立場である、という考え方(営造物利用者説)を採用しました。

学問の自由・大学の自治が及ばない場合

東大ポポロ事件、大学の自治が及ばない場合
  • 大学における学生の集会であっても、それが真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別な学問の自由と自治は享有しないと判断しました。
  • また、その集会が学生のみのものでなく、一般の公衆の入場を許す場合(公開の集会またはこれに準じるもの)には、学問の自由と自治は享有しないと判断しました。

本件への当てはめ

  • 本件の演劇発表会は、「反植民地闘争デー」の一環として行われ、演劇の内容も「松川事件」に取材し、開演前には資金カンパや「渋谷事件」の報告もなされました。これらは「実社会の政治的社会的活動」に当たる行為であると認定しました。
  • また、入場券を買えば誰でも入場できたことから、一般の公衆が入場することを許されたものであり、「公開の集会またはこれに準じるもの」であると判断しました。警察官も入場券を買って入場しています。
  • したがって、本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会に準じるものであるため、大学の学問の自由と自治はこれを享有しない、と結論付けました。
  • その結果、本件集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない、と判断しました。
  • 学生の暴行行為については、警察官が立ち去ろうとしていた状況などを考慮し、違法行為を排除するための緊急避難や正当防衛には当たらないとして、違法性阻却を否定しました。

行政書士試験で押さえておくべきポイント

東大ポポロ事件の抑えるポイント
  • 憲法23条の学問の自由は、研究・発表・教授の自由を含む。
  • 学問の自由を保障するため、大学の自治が認められている。
  • 大学の自治の内容は、人事、施設管理、学生管理(ある程度)。
  • 大学の自治は、特に教授その他の研究者に認められるものであり、学生は一般国民以上に学問の自由を享受できるのは教授等の効果としてである。
  • 大学における学生の集会でも、真に学問的な研究や発表のためでなく、「実社会の政治的社会的活動」に当たる場合や、「公開の集会またはこれに準じるもの」 である場合は、大学の学問の自由と自治は及ばない。
  • 本件演劇は、政治的活動であり、かつ公開に準じる集会であったため、警察官の立ち入りは大学の学問の自由と自治を侵害しないと判断された。

このように、東大ポポロ事件は、大学における学問の自由と自治の範囲を明確にし、それが無制限なものではなく、活動内容や公開性によって限界があることを示した重要な判例です。特に「実社会の政治的社会的活動」というキーワードはよく問われるポイントなので、しっかり覚えておきましょう。

この解説が、皆さんの行政書士試験対策の一助となれば幸いです。頑張ってください!

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