全農林警職法事件を分かりやすく解説

全農林警職法事件を分かりやすく解説してみた 憲法
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行政書士試験の学習、お疲れ様です!憲法分野の重要判例として頻出の「全農林警職法事件」をご存じでしょうか?

公務員の労働基本権に関する最高裁判決で、行政書士試験でも狙われやすいポイントがたくさん詰まっています。

この記事では、全農林警職法事件について、行政書士試験に合格するために押さえておきたい点を分かりやすく解説します!

どんな事件だったの?【事件の概要】

全農林警職法事件の概要

国会に「警察官職務執行法」の改正案が提出されました。これに対し、反対の立場をとっていた全農林労働組合(農林省の職員で組織された組合)の幹部だったXたちが、改正案に反対する統一行動の一環として、農林省の職員たちに勤務時間内に職場を離れて集会に参加するように説得したり、指示を出したりしました。

この行為が、国家公務員法で禁止されている公務員の争議行為や、それを「あおる」行為に当たるとして、Xさんたちが起訴された事件です。

何が問題になったの?【争点】

全農林警職法事件の争点

事件の最大の争点は、国家公務員法が公務員の争議行為やその「あおり行為」等を禁止し、これに罰則を設けていることが、憲法第28条が保障する勤労者の労働基本権に違反しないか、という点でした。

また、「あおり行為等」という言葉が不明確で、憲法第31条(罪刑法定主義など)に違反しないか、政治的目的のための争議行為やそのあおり行為を処罰することが憲法第21条(表現の自由)に違反しないか、といった点も争われました。

最高裁判所の判断【判決のポイント】

全農林警職法事件の判決のポイント

最高裁判所は、この事件で以下のように判断しました。

公務員にも憲法第28条の労働基本権の保障は及ぶ

公務員も勤労者として労務を提供し生活の資を得ている点で一般の勤労者と同じだからです。

ここは重要です!「公務員には労働基本権の保障が及ばない」という選択肢が出たら誤りです。

ただし、公務員の労働基本権は国民全体の共同利益のために制約を受ける。

なぜ公務員の労働基本権は制約されるのか? 最高裁判所は、公務員が一般の私企業の労働者と異なるいくつかの点に着目しました。

  • 地位の特殊性と職務の公共性→公務員は国民全体の奉仕者であり、職務は公共の利益のために行われます。公務の停廃は国民全体の利益に重大な影響を及ぼす可能性があります。
  • 勤務条件決定プロセスの違い→私企業のように労使の合意ではなく、法律や予算によって定められます。争議行為による圧力でこれを歪曲することは、議会制民主主義に反する可能性があります。
  • 代償措置の存在→争議行為が制限される代わりに、公務員には身分保障や、人事院による勤務条件に関する勧告・報告、人事院への不服申立て(行政措置要求や審査請求)といった、生存権擁護のための制度的な保障が講じられています

結論 国家公務員法の争議行為禁止・罰則規定は憲法に違反しない。

全農林警職法事件の結論

上記のような公務員の地位の特殊性、職務の公共性、そして代償措置の存在を考慮すると、公務員の争議行為やそのあおり行為等を禁止することは、国民全体の共同利益のためのやむを得ない制約であり、憲法第28条には違反しない、と判断しました。

「あおり行為等」に罰則があることについても、単なる争議参加者よりも社会的責任が重く、違法な争議行為を防ぐために必要であり、合理性がある、と判断しました。また、「あおり」や「企て」といった言葉は不明確ではないとして、憲法第31条にも違反しないとしました。

限定解釈について

全農林警職法事件の限定解釈について

かつての最高裁判例では、公務員の争議行為やあおり行為等に罰則を適用できるのは、「違法性の強いもの」に限られる、というような「限定解釈」が示唆されていました。これは、国民生活に重大な支障を及ぼすような行為など、その行為の態様や結果によって判断を分ける考え方です。

しかし、本判決(全農林警職法事件)の多数意見は、このような限定解釈は不要であり、国家公務員法の規定は限定解釈をしなくても合憲である、と判断しました。限定解釈をすると、かえって「違法性の強弱」の基準が不明確になり、憲法第31条に違反する疑いを生じさせる、と指摘しています。

政治目的の争議行為について

全農林警職法事件 政治目的の争議行為について

この事件での争議行為は、警察官職務執行法改正案反対という「政治目的」のために行われたものでした。

最高裁判所は、政治目的のための争議行為は、そもそも憲法第28条が保障する労働基本権の範囲外である、と明確に判断しました。憲法28条は勤労者の経済的地位向上のための手段としての争議行為を保障するものであり、政治的主張を通すための特権ではない、としています。

このような禁止された政治目的の争議行為をあおる行為は、たとえ思想の表現の一面があっても、国民全体の共同利益に重大な障害をもたらす可能性があり、憲法第21条の表現の自由の限界を超えるもの、と判断しました。

行政書士試験対策!ここがポイント!

全農林警職法事件のポイント
  • 公務員にも憲法第28条の労働基本権は及びます。これは重要です!
  • ただし、公務員の労働基本権は、地位の特殊性、職務の公共性、勤務条件決定プロセスの違い、代償措置の存在などを理由に、一般の勤労者より強い制約を受けます。
  • 国家公務員法が公務員の争議行為やあおり行為等を禁止し、罰則を設けている規定は、憲法第28条に違反しません(合憲です)。
  • 本判決(全農林警職法事件)は、争議行為やあおり行為に罰則を適用する際に、かつての判例が示唆したような限定解釈は不要であるとしました。
  • 政治目的のための争議行為は、憲法第28条の保障の範囲外であると判断されました。

これらのポイントをしっかり押さえて、本試験に臨みましょう!

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