早稲田大学江沢民講演会事件について分かりやすく解説

早稲田大学江沢民講演会事件についてわかりやすく解説 憲法
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行政書士試験の学習お疲れ様です。憲法分野では、基本的人権に関する重要判例が多く出題されます。今回は、プライバシー権に関わる有名な判例である「早稲田大学江沢民講演会事件」(早稲田大学名簿提供事件とも呼ばれます)について、試験対策のポイントも踏まえて解説します。

事件の概要

早稲田大学江沢民講演会事件の概要

この事件は、早稲田大学が中国の江沢民国家主席(当時)の講演会を企画し、その参加者名簿の取り扱いが問題となったものです。

  • 講演会の計画: 早稲田大学は、諸外国の要人を招いて講演会を開催しており、平成10年には中華人民共和国のE国家主席(江沢民氏)の講演会をF講堂で開催することを決定しました。
  • 参加者の募集: 講演会への参加希望者は、指定された期間内に大学の事務所などに備え置かれた名簿に、学籍番号、氏名、住所、電話番号を記入して申し込みました。名簿用紙にはこれらの記入欄があり、1枚に15名分の欄が設けられていました。名簿に記入した学生には参加証などが交付されました。
  • 名簿の提出: 大学は講演会の準備にあたり、警視庁、外務省、中国大使館などから警備体制の徹底を要請されていました。警視庁から警備のため講演会出席者の名簿を提出するよう要請を受けた大学は、内部での議論を経て、警察に警備を委ねるべく、この名簿の写しを参加者の同意を得ずに警視庁に提出しました。
  • その後の出来事: 上告人ら(名簿を提出された学生ら)は講演会に参加しましたが、講演中に立ち上がって大声を上げたため、警察官により会場外へ連れ出され、現行犯逮捕されました。その後、大学からもけん責処分を受けました。
  • 訴訟の提起: 上告人らは、大学に対し、不法な逮捕への協力や無効なけん責処分などを理由とする損害賠償等を求めるとともに、大学が参加者の氏名等が記載された名簿の写しを無断で警視庁に提出したことが、プライバシーを侵害したものであるとして、損害賠償を求めました。

争点

早稲田大学江沢民講演会事件の争点

この事件における主な争点は以下の2点です。

  • 講演会参加申込者の名簿に記載された学籍番号、氏名、住所、電話番号といった情報は、プライバシーに係る情報として法的に保護される対象となるか。
  • 大学がこれらの情報を参加者の同意を得ずに警察に提出した行為は、プライバシー侵害として不法行為を構成するか。

原審(第一審・控訴審)では、これらの情報はプライバシーとして法的保護に値するとしつつも、秘匿性の低さ、具体的な不利益がないこと、開示の目的が正当であることなどを考慮し、大学の行為は社会通念上許容される範囲であり、不法行為は構成しないと判断されました。しかし、最高裁はこの判断を見直しました。

最高裁の判断(行政書士試験での重要ポイント!)

早稲田大学江沢民講演会事件の最高裁の判断

最高裁は、原審の判断のうち、プライバシーとして法的保護に値するという点は是認しましたが、不法行為を構成しないとした点は是認できないとしました。

最高裁の判断の重要なポイントは以下の通りです。

氏名・住所などの情報はプライバシーとして保護される。

  • 学籍番号、氏名、住所、電話番号は、個人識別などのための単純な情報であり、それ自体としては秘匿される必要性が必ずしも高いものではない。
  • また、本件講演会に参加を申し込んだ学生であるという情報も同様である。
  • しかし、このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきである。
  • したがって、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである。

同意なき第三者への開示は原則として不法行為となる。

  • プライバシーに係る情報は、取り扱い方によっては個人の人格的な権利利益を損なうおそれがあるため、慎重に取り扱われる必要がある。
  • 情報を収集した大学は、上告人らの意思に基づかずにみだりにこれを他者に開示することは許されない。
  • 本件では、大学が本件個人情報を警察に開示することをあらかじめ明示した上で、参加希望者に名簿へ記入させるなどして開示について承諾を求めることは容易であったと考えられる。
  • それが困難であった特別な事情もうかがわれない中で、同意を得る手続きを執ることなく、無断で個人情報を警察に開示した大学の行為は、上告人らが任意に提供したプライバシーに係る情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものである。
  • したがって、大学の行為は上告人らのプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。
  • 原審が判断の根拠とした、情報の秘匿性の程度、開示による具体的な不利益の不存在、開示の目的の正当性・必要性などの事情は、上記の結論(プライバシー侵害による不法行為の成立)を左右しないとしました。

行政書士試験対策としてのまとめ

「早稲田大学江沢民講演会事件」は、以下の点をしっかり押さえましょう。

  • 学籍番号、氏名、住所、電話番号といった個人識別情報も、本人がみだりに開示されたくないと考える期待がある限り、プライバシーとして法的保護の対象となる。秘匿性が必ずしも高くない情報でも保護対象となりうる点がポイントです。
  • これらの情報を、本人の同意なくみだりに第三者に開示する行為は、原則としてプライバシー侵害による不法行為となる
  • 特に、開示について事前に本人の承諾を得る手続きが容易であったにもかかわらず、同意を得ずに行われた開示行為は、プライバシー情報の適切な管理に対する期待を裏切るものとして、不法行為を構成しやすい

この判例は、個人情報保護が重要視される現代において、氏名や住所といった比較的日常的な情報であっても、その無断での第三者提供がプライバシー侵害となりうることを示した重要な事例です。しっかりと理解しておきましょう。

この解説が、行政書士試験の学習にお役に立てれば幸いです。

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